Day 3: 連絡帳が、AI から届いた日

カメラが届き、AI が観察し、AI が書き、AI が描いた。 Day 2 のモック(手作り)から一歩前進して、丸一日で初めて「自動生成された連絡帳1日分」が手元に残った。

朝、Tapo C210 が届いた。ルーターに繋いで、固定 IP を振って、映像が取れた瞬間がちょっと感動した。 ここから「写真の山」がスタートする。

最終的に手元に残ったのは、午前から午後にかけて 15分ごとに撮影した数十枚の写真と、それを AI が読み、要約し、文章に編んだ連絡帳1日分。 そして、その日いちばん印象的だった瞬間を、絵本タッチに変換した1枚のイラスト

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今日の3つの発見

1.「文体」を AI に憑依させる

最初に生成した連絡帳は、典型的な "AI が書いた風" だった。 「素敵な一日でしたね」「微笑ましかったです」と、押し付けがましい感情の言葉が並んでいた。

参考にしたのは、保育園連絡帳の実例 13本。 保育士さんが子どもの様子を書いた、本物の連絡帳。読み返してみると、文体の特徴がいくつかある。 時刻はざっくり、字数は短め、書き手の主観は控えめ、変化や対比を描く、「(笑)」はペットの動作描写にだけ使う。

これを 「AI が書いている前提」のプロンプトに書き起こした。 読者は AI が書いていることを知っている。だから、過度に感情移入する書き手は、不気味の谷を生む。 観察を淡々と、控えめに物語化する。連絡帳の温度感だけ残して、AI の感情は抜く。 これで一気にトーンが整った。

2.「うちの子のイラスト」は文脈じゃない

イラストを試した最初の版は、連絡帳本文の "雰囲気" をイラスト化するものだった。 「2頭がハンモックでくつろぐ昼下がり」を絵本タッチで描く、みたいな。

でも、出てきたのは「どこかの可愛い動物の絵」だった。 これは違う。飼い主が欲しいのは「うちの子の絵」だ

設計を変えた。文脈じゃなく、その日の決定的瞬間の写真をベースに、絵本タッチに変換する。 写真の構図・体勢・関係性を保ったまま、輪郭だけを優しい水彩に置き換える。 これでようやく、「今日の、うちの子の絵」が出るようになった。 ペットロス対応、グッズ化、アルバム化。Okaeri の差別化レイヤーが見えてきた瞬間だった。

飼い主が欲しいのは「ペットの絵」ではなく、
「うちの子の、今日の絵」
この違いが、たぶん事業の核になる。

3. AI 連鎖の信頼性、上流テキストで補強する

ある写真をイラスト化したとき、不思議な現象が起きた。 画像には2頭が写っているはずなのに、出てきたイラストでは片方が床に出されていた。

原因は、ハンモックの中の2頭が「視覚的には塊」だったこと。 上流の AI(画像認識)は「2頭ハンモックで寝てる」と判定していたが、 下流の AI(画像生成)は元画像を見て「2頭はおかしい、片方は外に出すべき」と独自解釈してしまった。

解決は単純だった。下流の AI に、上流が観察した結果(言語)を一緒に渡す。 「この写真には2頭がハンモックの中にいる」と明示すると、画像生成 AI はその情報を信頼して、 2頭が一緒に寝ている絵を返してきた。

AI が連鎖して仕事をする時代、画像だけ、テキストだけ、ではなく、両方を併走させる設計が要る。 これは Okaeri に限らず、AI を組み合わせて働かせるあらゆるプロダクトで効いてくる原則だと思う。

残課題

完成形には、まだ届いていない。今日見えた次の課題は4つある。

1つ目は「中長期の文脈」。 ケージで暮らすペットの 1日は、行動の差が極小だ。 「今日だけ」見ると、平和すぎて変化が描けない。 「3日前と比べると朝のハンモック時間が増えた」「今月は雨の日が多くて活動量が少なめ」のような、 日・週・月単位のサマリーを連絡帳生成に注入する仕組みが必要になる。

2つ目は「写真選定の視覚明瞭性」。 今日のイラスト化で躓いたのは、上流 AI が「2頭ハンモック」と判定した写真が、 視覚的には判別困難なシーンだったことだった。 「内容(言語)で正しい」だけでなく「視覚的に分かりやすい」も加味した選定ロジックが要る。

3つ目は「イラスト変換の品質」。 今日採用した汎用の画像生成モデルは、「2頭がハンモックに並んでいる」のような分かりやすい構図は綺麗に変換できる。 ただ、片方が体を丸めて寝ているような曖昧なシルエットだと、輪郭が抽象的なオブジェクトに化けることがあった。 「うちの子」感を出すために、写真→イラスト変換に特化した専門サービスや、 個体ごとの特徴を学習させたモデルの検討が必要だ。たぶん、別レイヤーの工夫がいる。

4つ目は「配信」。 ここまで作っても、まだ Web で見るだけ。明日は LINE で届ける仕組みを作る。 毎日決まった時間に、見出し・写真・本文の頭がスーッと届く。あの体験を作りたい。

サンプルを見てほしい

今日 Day 3 で、AI が一通り全部やった連絡帳1日分が、こちらで見られる。

— サンプル(2026年5月12日 火曜日 晴れ)—

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連絡帳本文、選定された写真2枚、そして額装されたイラスト1枚。 写真は AI が膨大なフレームの中から「今日らしい瞬間」を2枚選び、 イラストは「今日いちばん印象的だった瞬間」を絵本タッチに変換したもの。 すべて、人間の介入なしで生成された

手作りモック(Day 2)からここまで丸一日。 まだ粗い、改善余地はたくさん残っている。それでも、「うちの子のイラスト」が手元に届いた瞬間は、開発者として泣きそうだった。 これは、いままで世の中になかった体験だと思う。

技術は手段、価値が目的。
プロダクトを通じて、世界中のペットと飼い主の関係性を豊かにすることが、究極の目的。
今日、その輪郭が、見えた気がする。

このシリーズの位置づけ

この Articles は、Okaeri 開発のオフィシャル記録だ。 note の方 にも同内容を、少し時間差で公開していく。 初出は okaeri.pet、note はミラー。情報の正本はここに置く。

5/12(火) Day 3 の進捗、ここまで。明日は LINE 配信。

東海林喜幸
東海林喜幸 しょうじ よしゆき
日本初(おそらく世界初)のミーアキャット専門カフェ「googoo」オーナー。Okaeri 開発中。

— 実物の連絡帳サンプル —

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